<2008年12月メール通信 転載・転送歓迎>
2008年12月7日
池住義憲
「12月メール通信」をお送りします。今回は、去る11月29日(土)、立
教大学大学院キリスト教学研究科開設記念講演会で講演した内容をベースにして
若干、削除・加筆したものです。参加された方々から文章化の要望を受けて書き
まとめました。ご笑読ください。
長文ですので、3回に分けて送信します。今回(第一回)は、「1.グローバ
リゼーションについて」。次回以降の内容は次の通りです。書き起こし次第、順
次、送信します(いずれも12月中に送信予定)。
2.グローバリゼーションへの対抗軸としての『平和的生存権』
3.NGO活動と『平和的生存権』~NGOを見直す新たな視点
4.これからの平和教育、人権教育、開発教育
以上
-------------------------------------------
「グローバリゼーション」vs「平和的生存権」
~これからの平和教育、人権教育、開発教育で
欠かせない視点を考える~
2008年12月7日
<2008年12月メール通信 転載・転送歓迎>
2008年12月7日
池住義憲
「12月メール通信」をお送りします。今回は、去る11月29日(土)、立
教大学大学院キリスト教学研究科開設記念講演会で講演した内容をベースにして
若干、削除・加筆したものです。参加された方々から文章化の要望を受けて書き
まとめました。ご笑読ください。
長文ですので、3回に分けて送信します。今回(第一回)は、「1.グローバ
リゼーションについて」。次回以降の内容は次の通りです。書き起こし次第、順
次、送信します(いずれも12月中に送信予定)。
2.グローバリゼーションへの対抗軸としての『平和的生存権』
3.NGO活動と『平和的生存権』~NGOを見直す新たな視点
4.これからの平和教育、人権教育、開発教育
以上
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「グローバリゼーション」vs「平和的生存権」
~これからの平和教育、人権教育、開発教育で
欠かせない視点を考える~
2008年12月7日
池住義憲
1.グローバリゼーションについて
●いま何が起こっているか
アメリカ発のサブプライムローン問題に端を発して、世界はいま、金融危機に
直面している。経営危機、経営破綻、倒産、解雇、大量失業、不況、国内および
各国間での格差拡大など…。アメリカがクシャミすれば世界が風邪をひく。そん
な現象だ。
実態経済とは別のところで巨額な投機マネーが瞬時に世界を駆け巡る。それが
株価や為替相場に影響を与え、各国経済に悪影響を及ぼす。世界経済は、今や巨
大なカジノの賭博場(カジノ資本主義)と化している。巨額投機マネーの瞬時流
入・流出は、国際的な食料価格の高騰など人々の生活といのちを直撃している。
●グローバリゼーションをどうみるか
グローバリゼーションとは何か。簡単にいうと、モノ(商品)、カネ(金融・投
資)、ヒト(労働者)、情報・技術・サービスが国境を越えて地球規模で自由に
行き来すること。国際的移動の量的な拡大、市場経済の世界的な拡大だ。
地球規模での自由な行き来をより可能にするため、国際的移動を制限する関税
や輸入禁止、輸出入制限などの障壁を取り除く。各国をすべて均等に、 “自由”
にする。市場経済にすべてを委ねる。市場経済は万能だからと信じて…。グロー
バリゼーションとは、自由市場経済化だ。国の管理・介入をやめ、可能な限り民
営化していく。
例えて言うならば、グローバリゼーションは「カール・ルイスと幼稚園児の100
m走!」のようなものだ。スタートラインでの差は、ない。すべて“等しい”条
件で競争する。どちらが勝つかは明らか。そう、弱肉強食、優勝劣敗の世界だ。
このルールは、強者の公正・平等観、強者の視点に基づいて設定される。この点
から、グローバリゼーションはアメリカ以外のあらゆる国を弱体化させる動き、
と解釈することができる。
●グローバリゼーションは何処からきたか
今日のグローバリゼーションは、1929年の大恐慌とそれに続く1930年代の大不
況に端を発する。当時、各国は一斉に自国経済を守るため、関税の引き上げや規
制強化など、保護貿易政策をとった。日本やドイツなど資源の乏しい国は、他国
侵略を目論んで軍拡化、全体主義化していく。アメリカ・イギリス・フランスも
同様に国内生産の保護貿易政策をとる。列強諸国は、当時の植民地を抱え込んだ
ブロック経済体制を敷く。こうした動きが第二次世界大戦を引き起こす大きな要
因となった。
大戦終結1年前の1944年7月、連合国首脳は米・ニューハンプシャー州ブレント
ンウッズに集まる。そこで戦後の世界経済体制を議論するため、連合国通貨金融
会議を開催する。連合国は、通貨と金融安定のために「国際通貨基金(IMF)
」を設立。米ドルを基軸通貨とし、固定相場制で戦後の通貨金融体制を決める。
同時に、貿易の振興と発展途上国の復興と経済発展のために、「国際復興開発銀
行(IBRD、通称:世界銀行)」を設立。この二つの国際機関を軸として国際
貿易の自由化と経済成長を目指す国際通貨・金融・貿易システムが、「ブレトン
ウッズ体制(IMF体制)」と呼ばれるものだ。
数年後には、関税や輸出入制限などの障壁を撤廃して貿易を自由化するため、
ブレトンウッズ体制の枠組みとして「関税と貿易に関する一般協定(GATT)
」が締結される。以後45年間にわたって、関税の引き下げなど貿易の自由化を進
める。世界は保護貿易から自由貿易へと方向を変える。
ブレトンウッズ体制は1971年のニクソンショックを機に崩壊する。米国経済が
ヴェトナム戦争などで財政赤字拡大となり、大幅な貿易赤字が膨らむ。ニクソン
大統領(当時)は、それまでの金とドルとの交換を前提とした固定為替相場制(
ブレントンウッズ通貨体制)から変動為替相場制に移行することを宣言。自国通
貨のドルを防衛するために。そして1973年以降、世界経済は市場にすべてを委ね
る自由市場経済へと突き進んでいく。
世界的規模の自由市場経済化の動きは、1995年、GATTを引き継ぐ形で誕生
した「世界貿易機関(WTO)」によって促進される。GATTは工業製品や農
産物等が対象だったが、WTOではそれに加えてサービス分野や金融・通信・知
的所有権・安全基準などほぼあらゆる分野を対象とする。ねらいはただ一点、世
界貿易を完全自由化すること。そのため、あらゆる分野、あらゆる活動に競争原
理を適用する。以上が今日のグローバリゼーションが生じた経緯だ。
●近年の特徴
近年におけるグローバリゼーションの特徴のひとつは、生産拠点を海外に移転
する動きだ。アウトソーシングまたは外部委託。国際競争が激しくなる中で、企
業は生産拠点(工場)をコストの安い国外に移す。同時に、企業およびその関連
金融機関は、工場移転先国の製造会社株や資産を所有する。IT技術をつかった
様々な金融派生商品(デリバティブ)も使う。このようにして工場移転先国の製
造業に支配力を及ぼし、売上をみずからの利益にすることを目論む。こうして国
際的な所有関係、従属関係が構築される。
近年、企業は社会貢献や国際貢献(フィランソロピィーおよびCSR)を重視
する姿勢を示している。しかし基本的に企業がよって立っている第一義的原則は
、当然のことながら利益・利潤確保優先だ。そのため、対費用効果(効率主義)
を最重視する。“Low Cost, High Price!” “Profits than People!”だ。製
薬会社でいえば “Patent, not Patient!”となる。「経済のための人々(People
for the Economy)
」か「人々のための経済(Economy for the People)」か、が問われている。
●価値観の世界同質化という問題
もうひとつ重要なことがある。それは、文化的「価値観」についてだ。マクド
ナルド社やトヨタ社など巨大企業は、生産と販売の両面で世界各国にアウトソー
シングしている。それにより、食文化やカーライフなど人々の生活や価値観に影
響を及ぼす。これを「マクドナリゼーション(MacDonalization)」「トヨタナイ
ゼーション(TOYOTAnization)」などと呼ぶ人がいる。
プラスの面もある。便利さや安価、効率の良さ、多文化食品の享受などだ。し
かし、マイナスの面により注視する必要がある。特定の単一製品・システムは、
特定の制度・価値観・文化を「優れたもの」と位置づけ、それまで蓄積してきた
地域固有の「優れた」伝統・文化・価値観を否定し、崩壊させてしまうことが起
こる。世界の共通化・同一化現象、または世界の同質化現象だ。強者・強国が持
っている基準や文化・価値観が、グローバル・スタンダードとなる。
●グローバリゼーションと「戦争」
戦争は、最大規模の経済活動だ。石油産業、軍需産業、IT産業、武器産業など
多産業が複合的に絡み合い、組み合わさっている。戦争は、最大の消費、最大の
経済需要を産み出す。戦争の目的は、資源、市場、支配、この三つの確保と拡大
だ。これが狙いだ。
戦争は、グローバリゼーションと密接に連動している。いや、戦争こそグロー
バリゼーションをうまく利用し、その恩恵を受けている。グローバリゼーション
は経済分野だけにとどまらない。政治軍事分野でも起きている。“911事件”
(2001年9月)以降、ブッシュ米大統領が世界に発信した“対テロ戦争”価値観が
それだ。今や世界はこの価値観・世界観が標準(スタンダード)となって動いて
いる。「テロリスト側につくか、我々の側につくか」という単純な二元論である
価値観・世界観で世界を二分し、“対テロ戦争(アフガン戦争、イラク戦争)”
は正義の戦争との世界共通化、世界同質化を目論む。
軍事拠点をアウトソーシングし、可能な限り、戦争の民営化をすすめる。傭兵
派遣専門であるブラックウォーター社は、現在、約 25,000~48,000人の民間軍事
会社関係者をイラクに派遣・駐在させている。そのほかにも、ハリバートン社、
べクテル社、カーライル・グループなどがある。これらはいずれもブッシュ政権
と強い繋がりを持つ米国の巨大企業だ。彼らは、本来米軍自身がやっていた戦地
での兵舎建設、兵士への食事供給などを委託されて行う。米大使館職員やイラク
政府高官を警護するだけでなく、米軍の軍事作戦にも参加する。正規の軍人では
ないので戦死者数には数えられていない。イラク戦争は、歴史上、最も「民営化
」された戦争だ。
グローバリゼーションの柱である自由市場主義政策は、イラク戦争に大々的に
導入された。2003年5月~2004年6月の間、米軍主導のイラク暫定行政当局(CPA)
が発した命令を見ればよくわかる。そこには、関税・輸入税・ライセンス料など
の撤廃、外国企業のイラク国内法の適用除外、イラク国有企業200社を民営化、外
資のイラク企業100%所有承認、外国企業の得た利潤を100%国外送金可、銀行に
外資50%参入可、外国企業に40年間の営業権を与える、など枚挙にいとまがない
。
(つづく)
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